「腰痛は、二本足で歩く人間の宿命だ」と言われることがあります。もともと4本足で歩いていた動物が、立ち上がったために内臓や骨格に負担がかかっているというのです。
ただ、この言葉は事実ではないようです。
以前、NHKが腰痛について調査した番組で、アフリカの草原に住む狩猟民族には、日本で言うような腰痛の人はいませんでした。たまに腰が痛いという人に会うと「木から落ちて、腰を打ったよ」だったり。
この人達は、一日に数十kmも歩くような狩猟生活を行っていました。二足歩行の時間は我々よりもずっと多いのですから、二足歩行自体が、腰痛の原因ではないことを示しています。
■立っている時の、腰の負担は少ない
腰の椎間板にかかる負担を計測した結果も、それを肯定しています。椎間板にかかる負担が一番少ないのは、寝ている時でした。これは当たり前ですね。
次に負担が少ないのは、なんと立っている時。腰椎が直立しているために、筋力を使う必要が少なくなり、椅子に座っているよりも楽だったのです。
現代の我々の生活は、座っていることだらけ。のみならず、もっとも腰に負担がかかる前かがみで作業することも少なくありません。つまり腰痛は進化の失敗ではなく、文明病だといえるのです。
■腰痛の予防には、足を鍛えよ!
もう一つ、腰痛を防ぐ上で必要なのは、足の力。
骨盤は、3つの骨で出来ていて、その柔軟性で歩くときの衝撃を吸収します。足の筋力が骨盤の両側で働いて、体重を支えているのです(図上)。
しかし足の筋力が弱ると、骨盤を引く力が弱まり、体重を支えきれなくなります。骨盤の中央が下がり、全体の形も狭くなってしまいます(図下)。全体が四角い形になることから、四角骨盤と呼ぶ人もいます。
この場合、左右の腸骨に支えられている仙骨は下がり、ズレやすくなります。これも、腰痛の一つの原因(私が腰痛の方を治療するときにも、まず下がった仙骨を持ち上げる作業をします)。
こうした骨盤の不調を予防するために、必要なのが足の力。
前述の狩猟民族の方々も、毎日長い距離を歩いているからこそ、腰痛と無縁でいられるのです。
一般的に腰痛体操というと、腹筋や背筋を鍛えることがメインになっています。それも間違いではありませんが、同時に足を鍛えることを忘れてはなりません。ウォーキングなど、足の筋肉を鍛える習慣も、腰痛対策には必要です。
まさに、足は健康の要、なのです。