人間には本能的な動作は少なく、環境や意思によって後天的に得る動作のほうが多い、というのが、前回の話でした。
今回は、後天的な環境に合わせたはずの動きが、なぜ腰痛や肩こりを起こすのかについて。
■肩こり、腰痛の原因は、体幹が動かないこと
人類の歴史をみると、採集や狩猟で、一日歩き続ける生活を続けてきたようです。立ち続けたり、座り続けたりという現代人の生活は、そもそも不自然で、それが健康をそこなう元になっているわけです。
デスクワークでも立ち仕事でも、使うのは主に肩から先だけですし、足は立っているだけ。体幹部は、手足の土台として動かさないことが多いのです。
動かないままの体幹部は、緊張が解けず痛み出す…これが、肩こり腰痛です。
重労働をしない生活では、体幹部の力を使わなくても、手足を動かすだけで事足りてしまいます。後天的な生活の中で、体幹部を使う方法を身につける機会がないのですね。
■急に話は飛びますが
「站椿(たんとう。別名、立禅)」という稽古があります。もとは中国の武術・健康法ですが、少し膝を曲げ、手はものを抱えるような形にして立ち続け、身体の感覚と向き合う練習です。
練習中、体幹をゆるめ柔らかく保つと、バランスをとる小さな動きの繰り返しで体温が上がり、早足歩きくらいに呼吸が上がってきます。
体幹部が動いて、これだけのエネルギーを使うのが、本来の姿というわけです(余談ですが、この揺れる站椿を毎日続けると、はっきり体重が落ちます)。
「体幹部は動く」というイメージがはっきりしてくると、肩も背中もやわらかくなってくるようです。
■そこで最近の治療では
癒着をとるだけではなく、固まった筋肉に動きをつけてやる操作をしています。
痛みの改善率が上がるだけでなく、何回か通ってくださった方では「腰痛が起こらなくなった」とおっしゃってくださることが増えました。
筋肉が柔らかさを思い出すのでしょうか。
こり、腰痛でお悩みの方。
立ち仕事、座り仕事は減らせないかもしれませんが、体操でもなんでもやってみて、体幹部の動きを思い出すのはいかがでしょうか?