アニメ監督の宮崎駿氏が、若いアニメーターを評して、
「アニメばっかり見てきたから、アニメが作れない!」
と嘆いているのを見たことがあります。
アニメ慣れしてるとアニメを作れない、と言うのは面白い言葉です。
■体験がないものは感じられない
ここで、宮崎氏が言っているのは「実感の不足」です。
例えば、アニメで木登りをするシーンがあったとします。手足を木に引っ掛けて身体を引き上げるのですが、そこで手足だけが動く絵を描いたら、間違いなのです。
手に強い力を入れるときには、それを支える肩や背中の筋肉も動きます。また、枝の傾きや、手がかりとの距離によって、力の大きさや方向も変わってくるのが、自然な動作。
こういう力の配分は、実際に木登りをしてみないとなかなかわかりません。実体験が不足していると、どこにどれだけの力が入るかの実感が無いので、不自然な映像になってしまうのです。
■身体の知識と体験は、車の両輪
ミラーニューロンがあっても、体験したことがない動作では、外面の形しか写し取ることができません。筋肉や関節の状態を写し取るには、筋肉や関節について、体験的な感覚を持っていることが必要なのです。
私自身の体験でも、古武術を習いだしてしばらくした頃、肩コリや腰の張りを見る力が伸びた、と感じる時期がありました。
治療には、骨や筋肉の解剖学的知識はもちろん必要です。
そして身体を使う経験は、知識を実感として理解させてくれます。
スポーツでも、武道でも、ダンスでもかまわないのですが、自分の身体と向かい合い、筋肉や関節についての感覚を育てること。
治療を上達させる方法の一つとして、有効だといえます。